金融商品の中で最もバブルなのはビットコイン?実は日本国債の価格がバブルな理由
バブルと言えばビットコイン。ビットコインと言えばバブル!そんな印象の方が多いのではないでしょうか。確かに仮想通貨ビットコインの価格は2017年に大きく値上がりし、一部の投資家の間で大きな話題になりました。
しかしながら、ビットコインを凌ぐバブル資産が日本には存在しています。今回はそのバブリーな金融商品について解説していきます。
ビットコインがバブル?最も買われている金融商品は日本国債(JGB)である!
日本国債は国の借金ですね。国債は最も信用力が高く、その金利は銀行貸出金利の基礎金利になっているような金融商品です。国債がバブルとはどういうことでしょうか。
ズバリ答えは中央銀行である日本銀行が「爆買い」していることによるものです。年間80兆円という大規模な国債の購入を行っており、市場に出回る国債の約7割を日銀が買っているのです。年間80兆円がどの程度の規模かというと、国家予算が約100兆円ですので「国家予算クラスの買い」と言っても過言ではないでしょう。
流通数量が少ないことでビットコインの「価格」は何倍にもなっていますが、国債は買われている「規模」が圧倒的なのです。仮想通貨は2018年3月時点では全体で約30兆円程度(金融庁)に過ぎませんが、国債の発行残高は1,000兆円を超えます。そしてうち約450兆円を日本銀行が購入しているのです(財務省)。約半分…!
市場の約半分が利益度外視でとりあえず買いまくるプレイヤーだとすると…市場が歪むのは感覚的にもお分かり頂けるのではないでしょうか。
参議院予算委員会で藤巻健史氏が発言した国債に関するデータが興味深いため引用します。
- (A)2015年時点国債発行額 154兆円
- (B)同年の日本銀行購入額 110兆円
- 日本銀行の購入割合=(B)/(A)=71.4%
他国と比較してもバブルな日本国債。金利が低く時価が高い!
同じマイナス金利圏であるヨーロッパ諸国を見ても、日本国債の金利の低さ(つまり「時価の高さ(※)」)は群を抜いています。10年物の国債(国の10年間の借金の証文を「今売り買いした場合」の利回り)の金利で比較してみましょう。
- アメリカ国債:2.95%
- フランス国債:0.76%
- ドイツ国債:0.52%
- 日本国債:0.04%
2018年5月7日時点/Bloombergより
※金利と時価は反対の関係にあります。時価が上がると金利が下がり、金利が下がると時価は上がります。つまり、日本の国債が超低金利ということは、「超時価が高い=超買われているので値段が上がっている」という事実があるのです。買う人が少なければ価格は下がり、金利は急騰しますが、日本国債はそういった状況ではないということですね。
金利と時価の関係については日経ビジネスオンライン「国債と金利の関係を整理する」を読むのが分かりやすくてオススメです。
アメリカ国債の金利が高いのは、そもそも短期でお金を借りるときの金利が高いからです。どちらかというと日本国債の比較は、同じマイナス金利政策を行っている欧州勢と行うのが妥当ではないかと思います。日本やヨーロッパは以前からこの短期金利を下げることで金融緩和を行ってきたため、短期金利がマイナスなのです。下げる余地がないどころか突き抜けてしまったのですね。
短期金利を下げることによる効果が見込めなくなったため、日銀は困った挙句長期の金利を操作しにかかったのです。これは全世界的に見ても他に例はありません。
一方欧州も、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和政策により短期金利は日本のそれよりもマイナス幅が深くなっています。また長期国債の購入等(具体的には❶ユーロ圏19カ国の国債、❷独・仏・西の政府機関債、❸EUの国際機関債、の買い入れ)により長期金利を下げているのですが「各国が発行した国債33%までしか買えない」という制約があるので、日銀ほどの爆買いは実施できません。
フランス国債は日本の金利の約20倍、ドイツ国債の金利でも10倍以上!いかに日本が低金利(時価が高い)か一目瞭然ですね。
国債バブルの主要因は日銀。なぜ日銀は国債を爆買いしているのか
金融緩和をして景気の流れを良くしようとしているから、というのが大義名分です。もはや法律で禁じられている「政府の借金肩代わり」に近いものがあるのですが…。
- 日銀が国債を爆買いして時価を釣り上げる
- 時価がつり上がると国債の金利が下がる
- 国債の金利が下がると民間企業の借入金利が下がる(ついでに政府の支払利息が減るのですヨ)
- 民間企業は借入金利が下がると借入をして積極的に投資する
- ついでに日銀が払った資金はじゃぶじゃぶ市場に溢れるので、お金の価値が下がり、物の価値が上がる(インフレ)
- 民間企業の業績が良くなり、賃金が上がる
- 景気が良くなる
ざっとこんなカラクリです。しかしながら、そうは問屋が卸しません。長引く日本のデフレに慣れきった国民は、ひとたび値上げが行われると蟻の子が散るように一気にサービスから離れていきます。物価が上がらないのです。
アメリカ中央銀行(のようなところ。連邦準備制度理事会)のイエレン前議長も、「金融緩和をしても物価が上がらないのはミステリーだ」と評していました。
筆者は「緩和したじゃぶじゃぶ資金が消費者(労働者)の手元まで届かず、金融機関が資金をダブつかせているだけだからだ」と分析しています。
藤巻先生のTweetも大変参考になります。
長期金利は中央銀行ではコントロールできないとは金融論でも常識でしたが、昨年だったか突然、ホームページ上では「長期金利をコントロールに変える」と変えました。たしかに市場発行額の75%も買えば金利を低く抑え込むことはできますが、それは日銀が長期金利をコントロールできるとは言いません。
— 藤巻健史 (@fujimaki_takesi) May 5, 2018
藤巻先生、ご質問なのですがドイツ・フランス国債とJGB利回りの差は中央銀行(日銀)の爆買いが主要因という理解で良いでしょうか?ECBも資産買入オペを実施しているものの、彼らは買入上限あり(各国残高の33%)。日銀の買いがなければJGBとドイツ・フランス国債の金利は同程度?と推測しています
— さかえる🏝田舎に仕事がないはウソ (@sakaeruman) May 7, 2018
名目金利=実質金利+インフレ期待率+倒産確率です。もし日銀が国債爆買を辞めれば日本政府は資金繰り倒産の危機で倒産確率やCDSレートはぐっと上がるでしょう。ロシア危機(98年)の時のように。したがって私は日銀の爆買がなければJGBの金利はドイツ・フランスよりはるかに高いと思います。 https://t.co/19e05cx5H6
— 藤巻健史 (@fujimaki_takesi) May 7, 2018
おわりに〜バブルがはじけたら?〜
日本は果たして大丈夫なのでしょうか。物価が上がらないカラクリや、今後「日本国債バブル」が仮に弾けた場合に備えて私たちがどうすれば良いのか、という点は「いつまでドーピングを続けるの?日本銀行の異次元緩和政策を振り返る」にて解説していますので是非ご一読ください。
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