結論から言いましょう。現在が、人口の爆発的な増加の恩恵を受けていた1970年代(50年前)ならいざ知らず、
これからの時代、「資産になる家」などという超魅力的な物件が一般人のところに回ってくることはありません。
「資産になる家」とは、30年後の売却時にキャピタルゲインが生み出せるものです。あるいは賃貸したときのインカムゲインの現在価値の総額が購入額を上回る場合。
「銀行の担保価値」を元に「資産になる」などという自称「金融のプロ」がいるから身の丈に合わない借金で苦しむ若者が増えるんです。 https://t.co/ukX3E8zInS
— さかえる🏝田舎に仕事がないはウソ (@sakaeruman) June 12, 2018
「金融のプロ」を自称する、ファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士の「家はあなたの資産になります」に騙されないようにしましょう。結局割りを食うのは身の丈に合わない借金を背負わされて苦しむ個人であることを忘れないようにしたいですね。
多額の借入を起こす時に考えたいのは「この借入で行う投資で、将来的に借入額と金利分が回収可能か」ということに尽きます。
あなたが買おうとしているその数千万円のマイホーム、ローン支払が終わった35年後に今より高い値段で売れるのでしょうか?
高く売れないにしても、あなたの子供に「負動産」として受け継がれることはないでしょうか?
この記事では、マイホームが購入時の価値を保つことはほぼ不可能である理由と、これからを生きる若者の「住戦略」を考えます。
用語解説
「キャピタルゲイン」とは
保有している資産を売却することによって得られる売買益のこと。
「インカムゲイン」とは
資産を保有中に得られる収益のこと。 例えば、株式では配当金、債券では利子、不動産では賃貸することにより得られる家賃収入がインカムゲインに当たる。資産を保有し続けることで、継続的な収入を期待することができるもの。
目次
人口が減少する社会で不動産価格の上昇は、まず見込めない
今後、2040年までに人口は激減します。土地の総面積が変わらない中、そこに住む人が減るとどうなるでしょうか。
当然土地の価値は減少していきます。35年ローンなど組んだら最後、35年後は2050年。
現在1億2,000万人いる人口が1億人を下回るであろうタイミングで、1970年代(50年前)の人口とほぼ同じになるのです。
1970年代から1990年代の経済成長は、殆どの部分を「人口増加によるマス経済」によって説明可能です。
土地が値上りして「マイホーム資産神話」ができたのもちょうどこの頃。
私は現在20代後半ですが、私の両親が家の購入を検討していた時は「家はいずれ値上りするので、誰かに売ればほぼ確実に儲かる資産」でした。それもこれも、人口が増加しており、とりわけお金を稼ぐ世代(生産年齢人口)が増加していたからです。
(出所)人口問題研究所
増え続ける空き家。家が死ぬほど余るのに、まだ新築を買おうとしているの?
人口が減少するということは「今まで1億2,000万人が住んでいたインフラ」に穴が開くことはどう考えても間違いありません。
以下の図は、NRI(野村総合研究所)が試算した2030年における空き家数と割合の予測です。
現在から約10年後という「近い未来」においてもなんと30%が空き家となるのです。3軒に1軒が空き家になる計算です。
空き家の予測は2030年までとなっていますが、先ほど確認した人口の推移と照らし合わせると、さらに恐ろしいことがお分りいただけるでしょうか。
そうです。2030年時点ではまだ、人口は1億1,000万人程度の水準を保っているのです。
そんな状況ですら空き家率が30%を超える状況が今から訪れるのです。
2050年を少し考えただけでゾッとしませんか?とある地方では、既に地域の2/3が空き家になっている場所も。
そんな場所では、なんと「タダでいいから引き取って欲しい」という家も多いのです。
「東京の不動産なら大丈夫」という大嘘に騙されるな
東京の人口のピークは2025年。地方からの人口流入がある分、人口が減少し始める時期は遅いのです。
しかしながら、その後の人口推移は減少の一途を辿ります。結局「厳しい」状況は同じ。
遅かれ早かれ「ヤバイ」ということに変わりはないですね。
23区内でも、人口が増加する地域は限られます。
中央区、江東区、港区。
超多額の資金が必要になる地域ですね。
タダで良いから引き取って欲しい?「不動産」が「負動産」になる理由
ズバリ2点。❶固定資産税と都市計画税、❷管理の手間、これに尽きます。
地方の田舎では、❶の金額はたかが知れていますが、❷管理の手間がものすごくかかるのです。
その場所に住んでいなくても、定期的に帰省して掃除をしなければならず、庭があれば草刈りをしなければならない。交通費もバカになりませんね。
「貸せば良いのでは」という声が聞こえてきそうですが、地域の2/3が空き家なんですよ?借り手なんているはずがありません。
「それって地方の田舎の話でしょ?」という声も聞こえてきそうですね…。
上のグラフをもう一度見直しましょう。2050年には首都圏でも2軒に1軒は空き家、下手するともっと空き家が増えているかもしれません。
そのような中で、仮にあなたが新築の住宅を購入した場合、それを受け継ぐ子供は嬉しいでしょうか?よく考えてみることをお薦めします。
田舎では❶のは大したことのない金額でも、地価が下がるといえ、首都圏における固定資産税と都市計画税の負担は…
「住宅ローンが組める=担保価値がある」ではない
お金がないのに家が買えた人、住宅がジャンジャン売れてウハウハだった営業マンに住宅メーカー。金を貸しまくって回収前に債権を売りさばいてホクホクの金融機関。
魔法はいつかとけるんです。結局最も損するのは誰か?貸し倒れた金融機関じゃない。
金貸しに乗せられて借金をした個人なんですよ。
— さかえる🏝田舎に仕事がないはウソ (@sakaeruman) June 13, 2018
まず、銀行が物件の価値を正しく判定できる、と考えるのはやめましょう。
銀行が考えているのは「お金が貸せる先」です。そこに適正な物件価値の判断はありません。
銀行が担保価値を全く正しく認識していない、というと嘘になるのでもう少し詳しくお話しすると…
「銀行は住宅ローンを返済する人をマルっと抑えている」ので、多少物件価値が損なわれても、借りた人が働いて返せる限りは問題ないのです。
一般的に金融機関は、住宅ローンを貸し出す際にその人の❶健康状態、❷勤続年数などを注意して見ています。
つまり、その人が35年にわたって「せっせと着実に借金を返済できるか」どうか見極めているのです。
サラリーマンが約束どおり毎月借金の返済をしてくれるほど、銀行にとっては有難い話なのです。
個人の人生の豊かさを考えて借入金額を提案できるような銀行員はほんの一握りだと思います。
ノルマに追われる殆どの銀行員は「限度額いっぱいまで」借りて欲しい、と思っているはずです。そこに相手の人間をおもんばかる心は、ありません。
「住宅ローンが組める=返済できる」ではない
何より勘違いしていただきたくないことです。
余裕を持ちつつ他のことにもある程度お金が使えるようでなければ、何のために住宅を購入したのか分からないですね。
住宅にかけられる支出は、収入全体を10とすると「3まで」ということはよく耳にすると思います。
月給が20万円だとすると6万円。30万円だとすると9万円。その水準を超えるとやや生活が苦しくなってきます。
なんとか暮らすことができたとしても、貯金もできず、子供ができれば教育費で四苦八苦。
少しも贅沢のできない生活ではまさに「住むために働く」状態ですね。
「賃貸のデメリット」のウソ。若者は負動産リスク抱えず賃貸で良い
よくある賃貸のデメリットですが…
年老いてから貸してくれる先がない。一生家賃を払わなければならない。これはいずれも杞憂です。
先ほどの人口と空き家の予測推移をご覧いただければ一目瞭然なのですが、今後、高齢者と空き家が激増するのですよ?
高齢者に貸すことができなければ、不動産のオーナーはいずれ空室に頭を悩ますことになります。
またそうした背景から、最近では高齢者でも賃貸が契約できるような仕組み(家賃債務保証や、高齢者賃貸)が少しずつ構築されつつあるのです。
一生家賃を払い続けなければいけない、という点についても、自宅を購入したからといって免れられる問題ではないのです。
住宅ローンを払い終える頃には、当然ガタがきているマイホーム。維持修繕コストもバカになりません。
高齢夫婦2人には広すぎて掃除や管理が大変になるかもしれないですね。実は賃貸の方が、ライフステージに合わせた住みかえが簡単にできるので、
自らの流動性を失わないためにも、私自身は賃貸をお薦めしています。
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