東京在住者の約半数が地方移住を希望?移住希望者が増えていることが分かる3つの根拠
人口の東京一極集中が問題になっています。世代別で最も数の多い団塊の世代や団塊ジュニアが地方から東京へ転出し、その世代が現役を退くことで、高齢者を支える現役世代が急激に減少していくことが見込まれています。
増え続ける社会保障費をどのようにコントロールすればよいのか、日本における大きな課題の一つになっています。人口減少社会における大きな問題点を解決するために、現役世代の地方移住が一つの解決策と言われています。
一方、「いくら地方がよいと言われても、そもそも地方移住したい人の母数って少ないのでは?」という疑問も湧いてくることも事実でしょう。今回は、地方移住のニーズが潜在的にどの程度あるのか考えてみようと思います。
東京在住者の約半数が地方移住を希望!移住したい人が増えていることがわかる根拠3点
内閣府調査で判明。移住希望者割合は4~5割にも達していた
内閣官房・内閣府「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」の結果概要についてに基づけば、東京在住者の移住希望は全体で約4割。地方出身者に限れば約半数が「今後移住を検討したい」と回答しています。
10年前から定点観測。データでわかる農山漁村への憧れ
また、内閣府世論調査「都市住民の農山漁村への定住願望」 調査の結果でも、10年前と比較して都市住民の農山漁村への定住願望割合は着実に増加しています(平成17年20%→平成26年30%)。
移住相談も10年間で急増!移住希望者の”旅人の酒場”ふるさと回帰支援センター
加えて、筆者も移住を検討するにあたって度々利用している「ふるさと回帰支援センター」からの聞き取りによれば、2009年頃から40代以降の世代の地方移住相談が急増しているとのことです。
以上の結果では、特に 30 代以下の若年層及び 50 代男性の移住に対する意識が高いということを踏まえれば、若者や中高年層の希望する生き方を実現することにより、東京一極集中から地方へと人の流れを変えることができる潜在的な可能性が存在すると言えるでしょう。
移住希望者割合が伸びている要因
10年ほど前(2000年頃)から「スローライフ」が着目されるようになり、環境問題への関心も高まってきました。それと同時に、地方の人口減少問題にスポットライトが当たり始め、政府主導でも本格的に対策を検討し始めたことが人々の意識に浸透したことが一つの要因として考えられます。
また足元では
❶安倍内閣において「地方創生」がスローガンとして掲げられ地方の活力向上と人口がセットで語られることが増えたこと、❷働き方改革の一環でテレワークなどの取り組みが進み場所を選ばず働くことのできる環境が整いつつあること、❸ゆとり教育により「QOL (Quality of Life)」を重視する世代が誕生してきたことなども、 人々が地方への移住を検討する一つの材料になっていると言えるのではないでしょうか。
(参考)東京都一極集中からの脱却を目指した「生涯活躍のまち」構想
「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想においては、高齢者の移住を促進しようという取組が行われています。60~70代の元気なシニアを地方に流入させることで、働き手の少ない地方における地域活性化の解決策の一つとしては提言されているものです。その60~70代が要介護認定される頃に誰がその地方を支えるのか、という点については引き続き課題を残すことになるので、高齢者を地方に押し付ける政策であると筆者は非常に違和感を感じています。
やはり、今後数十年にわたって地方で現役として活躍でき、新たなコミュニティを作ることができる20~30代の移住促進が不可欠なのではないでしょうか。
「生涯活躍のまち」構想は、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方や「まちなか」に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくり」を目指すものである。本構想の意義としては、①高齢者の希望の実現、②地方へのひとの流れの推進、③東京圏の高齢化問題への対応、の3つの点があげられる。(まち・ひと・しごと創生本部「生涯活躍のまち」構想最終報告より)
(参考)中央省庁の地方移住に関する検討状況のまとめ
- 内閣官房・内閣府「地方創生」
- 内閣官房・内閣府「まち・ひと・しごと創生本部」
- 総務省「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」
コメント